ICO追っかけ女子大生日記

JD徒然草

徒然なるままに心にうつりゆくよしなし事を書きます。

BUSINESS INSIDERイベント② 弁護士増島先生編

こんばんは。自分でタスクを増やしながら積み上げたタスクにつぶされかけている女子大生です。

今回は、12月4日に開催されたBUSINESS INSIDERイベントでの森・濱田松本法律事務所の増島先生のお話の内容を紹介したいと思います。

法律分野の話だったので、難しい内容もありましたが、現行法での実情を教えていただくことができて、大変興味深かったです。

【弁護士増島先生のお話概要】

「仮想通貨」とは分散型サービスに対して使用される①支払い手段、②リソース提供者に対する報酬、として従来型サービスにおける電子マネー(前払式支払手段)と同列のもの

ビットコイン:ペイメントの分散型アプリケーション

✓ペイメントとは、ユーザーの残高を追跡・更新する(=管理する)ことが出来る機能

✓紙幣など物理的な形態をとらずにこれを行うため、信頼できる残高管理の主体が必要

✓ナカモトサトシ論文の提案する解決方法は以下の通り

P2Pネットワークを作り、すべての取引を全員に通知する。

・通知では、ネットワーク上で消費したい資金を特定し、暗号を用いて署名することでその取引が自ら行った者であることがわかるようにする。

・二重消費を予防するためのタイムスタンプが必要になる。その方法として①誰かに最初の取引につきタイムスタンプを押させる方法②タイムスタンパーを競争によって都度決める方法がある。

・競争によるマーケットソリューションを成立させるためには、報酬が必要になり、これがビットコインである。

・競争の手段は電気代を食う計算競争とする。コストを掛けさせてリワードすることで、同じコストを割いて悪事を働くインセンティブを下げる。これによりアダム・スミスの言う「我々が食事をできるのは、肉屋や酒屋やパン屋の主人が博愛心を発揮するからではなく、自分の利益を追求するからである」と同じ原理を作り出し、ペイメントの仕組みを回す。

・電気代の支払いのためにマイナーはビットコインを売却することになり、これによりビットコインが流通することになる。

ビットコインは、中央管理者を市場競争に置き換えるためのリワードとして機能するとともに、支払いネットワーク上の支払い手段として機能する。

Filecoin:ストレージサービスの分散型アプリケーション

✓余剰ハードディスクスペースの提供者に対し、報酬としてFilecoinが提供される。

✓ユーザーは、P2Pネットワーク上のストレージを用いるためにFilecoinが必要となる。

Ethereum:分散型サービスを組成するための分散型アプリケーション(world computer)

✓Ethereumの利用者(プロダクトのデベロッパー)はetherによるP2Pネットワークが既に組成されている上にアプリケーションを展開することができる。

✓コンピューティングリソースの提供者に対し、報酬としてetherが提供される。

▶ 最初にうまれたビットコインがたまたまペイメントアプリケーションのためのトークンだったため、仮想通貨は通貨に代わる何かなのではないかと世界中の人が誤解した可能性がある。

・残高を表示できる技術なので、ブロックチェーン技術的には電子マネーを扱うこともできるし、法定通貨を扱うこともできる。

・仮想通貨は今までの通貨に代わる何かではなく、支払い手段として用いられることもあるが、アプリケーションを機能させるためのリソース提供者に対する報酬として機能するものである。

 

現行法制は仮想通貨法制のごく一部しかカバーしていない

<整備済み>

☑仮想通貨の定義を決定し、単なるデジタルアセットとの線引きを明確化

1号仮想通貨:不特定の者との間で、法定通貨建てで売買が可能

2号仮想通貨:不特定の者との間で、1号仮想通貨建てで売買が可能

☑仮想通貨周辺のビジネスのうち、規制対象者を特定

犯罪収益移転防止法上の特定事業者としてマネロン・テロ資金供与撲滅にコミット

・取引所・両替所ビジネス

・仮想通貨販売ビジネス

・仲介ビジネス

・代替ビジネス

ウォレットは現状規制対象外だが、世界の趨勢は規制のスコープにとらえ始めている

<未整備>

□仮想通貨の市場規制

商品取引所規制に相当する規制

・仮装取引の禁止、相場操縦取引の禁止、etc.

・サーキットブレイカー、etc.

・新規取り扱い、取扱廃止

□仮想通貨の金融取引

・貸付 ―貸金業に相当する規制

・預かり ―出資法に相当する規制

・仮想通貨建ファンド ―金商法(ファンド法制)

・仮想通貨投資ファンド ―事業投資型ファンド

デリバティブ取引 ―商品先物取引規制に相当する規制

 

仮想通貨建ての貸付や預かりは、現状規制に服していない

◆賃金業法上の賃金業の定義に当たるか?

□賃金業法2条1項

 「『賃金業』とは、金銭の貸付け又は金銭の賃借の媒介であって業として行うものをいう」

ビットコインは「金銭」ではない(2015年 国会答弁)

・借主に対して業として行う仮想通貨の貸付けは「賃金業」に該当しない

・仮想通貨交換所は、レバレッジ取引に際して法定通貨を貸し付ける場合には賃金業登録が必要となるが仮想通貨を貸し付ける場合には不要

・仮想通貨建て取引を用いて賃金業の潜脱を行うものは、賃金業法に違反する

 ✓仮想通貨で貸し付けて法定通貨での返済を要求

 ✓その他借主の法定通貨需要を満たすために仮想通貨貸付を間に挟む

・仮想通貨建ての取引でも、利息制限法上の規制や出資法の規制の趣旨に沿って取り扱うというのが実務

 

対公衆性のある仮想通貨の貸し借りの仕組みも、原則として規制が及んでいない

◆仮想通貨建社債は「社債」に該当するか?

会社法上の「社債」には該当しない

 会社法2条23号「社債 この法律の規定により会社が行う割り当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、第676条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるもの」

・(おそらく)金商法上の「社債」「外国籍社債」にも該当しない

・現行では、会社法及び金商法上の規制の趣旨を可能な限り遵守して、特定投資家に相当する者に対してのみ、仮想通貨建債券を発行する、という実務となっている

会社法上の強行法規は適用されないほか、金商法コンプライアンスも自主的なものにとどまる

◆仮想通貨建社債の取扱いは金商法上のライセンスを必要とするか?

・現行法上、仮想通貨建社債が「社債」に該当せず、その他の有価証券等に該当しない以上、金商法上のライセンスに関する話は出てこない。

 

法定通貨を集めて仮想通貨に投資する組合型ファンドは、事業型ファンドの規制に留意

◆仮想通貨への投資を期して法定通貨による出資(匿名組合出資)を募るファンドは集団投資スキームに該当するか?

・集団投資スキーム(金商法2条5号):

①出資者が金銭又はこれに類するものとして政令に定めたものを拠出

②拠出を充てて事業を行う

③出資対象事業から生ずる収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利

金商法上の集団投資スキームに該当

・出資の勧誘を行う事業体又はその取扱者は、第二種金融商品取引業の登録が必要

・ファンドの出資に当たって目論見書の交付による開示規制は課されない(事業型ファンド)

・第二種金融商品取引業協会「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規制」が適用(2018/1/1から)

・運用会社は、投資運用業の四角は不要

 

仮想通貨建の集団投資スキームは、一定の場合に金商法が適用される可能性があることに注意

◆有価証券への投資を期して仮想通貨による出資(匿名組合出資)を募るファンドは集団投資スキームに該当するか?

仮想通貨建でも匿名組合契約の定義は満たす

 匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。

・集団投資スキーム(金商法2条2項5号):

①出資者が金銭又はこれに類するものとして政令で定めたものを拠出

②拠出を充てて事業を行う

③出資対象事業から生ずる収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利

□②と③は充足

□①は充足するか?

・現行政令には、仮想通貨は「金銭に類するもの」として列記されていない

・しかし、仮想通貨を受け入れて通常の運用業規制又は事業型ファンド規制が適用されるような取引を行うことは、二種業規制の潜脱に該当するものとして、無登録業者となる可能性がある

 

ICOは、分散型サービスの開発(ソフトウェア開発+P2Pネットワーク開発)のための費用を調達するための手法であり、新たなクラウドファンディングの形として捉えられる

購入型クラウドファンディング:中央集権型サービスの開発費用を調達するための手法

・開発者は、サービスの利用料金をあらかじめ受け取る

・見返りとして提供されるものが、提示型のもの(=保有者が提示すればアプリケーションを入手・利用できるもの)である場合は、前払式支払手段として取り扱われる

・見返りはブロックチェーン(ERC20)ベースのトークンであることも可能だが、これはあくまでも前払式支払手段であって真正なICOトーウンではない

ICOクラウドファンディング:分散型サービスの開発費用を調達するための方法

・分散型サービスは、①サービスプラットフォームとしてのソフトウェアのほかに、②リソースの提供者のP2Pネットワークを開発することが必須

・開発者は①②を開発するために必要な資金を、サービスに利用できるトークンを販売することで獲得

・販売するトークンが、仮想通貨の定義に当てはまる場合には、仮想通貨として取り扱われる結果、販売者は仮想通貨交換業の登録を要することになる

 

モノの引渡請求権をトークン化することで、リアルのアセットをインターネット上で取引することができるパラダイムトークナイゼーション)が、ブロックチェーン技術の次なるディスラプション領域となる

ブロックチェーンで行われていることは、大きく2つに分かれる

<パターン1>既存の事業者(帳簿管理者)が自らのビジネスの中にブロックチェーン技術を取り込む

・帳簿管理コストの削減

・スマートコントラクトを用いた社内外の事務オペレーションの自動化

・改竄耐性を活用したオペレーションの透明化(証拠化)

<特徴>

✓プライベートブロックチェーンを使用

✓既存のビジネスモデルを前提に業務改善にブロックチェーンを応用

✓Distributed Ledger Technology (DLT)という用語を用いる傾向

<パターン2>ディスラプターブロックチェーン技術を用いて既存のフレームワークと異なるビジネスフレームワークを提示する

<特徴>

✓分散型サービスモデル

✓リクイディティを活かしたトークンエコノミーモデル

✓パブリックブロックチェーンを使用

✓ディスラプターが次に取り組むであろうリアルアセットのトークン化

【おわりに】

増島先生のお話では、日本は法規制の面では世界的に見てかなり進んでいる方である、ということでした。なぜなら、国として一番楽な方法は全てを禁止してしまうことですが、日本は技術の発展を後押しするために国民の安全を保ちながら規制すべき点を考慮しているからです。これからもいろいろな法整備が整っていって、今よりもっと安心して仮想通貨を扱うことができるようになればいいですね。

お読みいただきありがとうございました。